山廃の日本酒の作り方や味の特徴

日本酒の中には、ラベルに「山廃」と書かれているものがあります。「山廃」とはどういう意味なのか、山廃の日本酒の作り方や味の特徴について解説します。

山廃仕込みとは?

山廃仕込みとは、山卸という作業を廃止したため山廃という名づけられた製造方法です。
山卸は米をすりつぶすことで酵素の働きを高める目的で行われていましたが、行わなくてもおいしく飲め、発酵にかかる時間は変わらないことがわかりました。
これは、山廃は明治末期に誕生した方法です。
山卸という作業は職人泣かせの面倒な作業だったため、それを行わずに製造できるというのは画期的なことでした。
近年の速醸酛造りと比べると、山廃仕込みも時間がかかります。

廃止した山卸作業

山卸とはどういう作業のことをいうのでしょうか。
日本酒を作る工程で、アルコール発酵を促す酒母造りの工程は重要であり、従来の作り方では酒母の培養に1カ月ほどかかります。
酒母造りの中でも特に重要な作業が山卸とされており、米を櫂棒(かじぼう)で丹念にすりつぶす作業です。
半切り桶という浅い桶に蒸した米と米麹と水を分けて仕込む方法で、15~20時間置いておくと、米が水分を吸って膨張するので、それを櫂で丹念にすりつぶしていきます。
半切り桶1枚当たりの作業時間が15分程度かかり、3時間ごとに二番摺り、三番摺りと繰り返していくことが特徴です。
寒い時期の深夜から早朝にかけて行い、でんぷんの糖化を促すために行われていた作業です。

生酛造りとは違うのか

生酛造りは昔ながらの醸造方法です。
自然界に存在する乳酸菌を取り込んで酸を生み出し、時間や手間をかけて酒母を培養するのが生酛造りの特徴で、酒母造りに約1カ月かかります。
生酛造りでは時間をかけて米をすりつぶす山卸作業を行いますが、山廃仕込みと生酛造りのもっとも大きな違いは山卸をするかしないかです。
山廃仕込みでも生酛造りでも、基本的に酒母ができるまでにかかる時間は同じです。

山廃仕込みの飲み方

山廃仕込みの日本酒はどのような飲み方をすればおいしく飲めるのでしょうか。
山廃仕込みで作った日本酒は、濃厚で深みのある味わいのため、好き嫌いが分かれやすいです。
天然の乳酸菌が使われているので酸味が強めのものが多く、フルーティーで甘酸っぱいと表現されることが多いでしょう。
旨味を存分に味わうなら40度前後のぬる燗がおすすめで、山廃仕込みの日本酒はアミノ酸が豊富なので、人肌程度の温度に温めることで旨味や甘みが引き立ちます。
常温でも熱燗でも冷酒でも飲めますが、クセが強いので、日本酒が苦手な人は飲みにくいと感じる可能性があります。

山廃に合うおつまみ

山廃仕込みはワインと似た芳醇な香りや強い旨味、甘みや酸味などが特徴のため、ワインに合う料理は山廃仕込みの日本酒にも合うことが多いです。
銘柄によっても味わいが異なりますが、山廃仕込みはずっしりとした深みのある味が特徴なので、白身魚なら西京漬け、刺身なら脂ののったマグロ、魚介類のバター焼きなどしっかりした味のものと相性がよいといえます。
山廃仕込みの特徴をきちんと理解すれば、合う飲み方やおつまみを選べるのでおいしく飲めるでしょう。