何故傷跡は残ってしまうのか
擦り傷や切り傷など、怪我を負ったことが無い人は居ないはず。同じ傷でも、残る傷と綺麗に消える傷があるのは何故なのでしょうか。
肌の構造を知る
人間の皮膚は、表面から表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれています。傷がどの層まで達したのかにより、傷跡が残るのかどうかが決まります。
表皮のみの傷
日焼けレベルの火傷であれば、表面だけが傷付いた状態です。表皮のみの傷であれば、後は残らずに再生します。真皮までの傷
真皮の半分以上まで達した傷は、再生しきれずに残ります。目立つほどの傷跡にはならないものの、完全に皮膚が再生することはありません。はっきりとした傷跡が残る皮下組織までの傷
表皮、真皮の下の皮下組織まで達した傷が、目に見える傷跡として残ります。重要なのは真皮までの傷であっても、毛穴が残っている程度までの傷であることです。
毛穴が残っていると、表皮の細胞が真皮の上に皮膚を増やすことが可能なのです。
真皮と表皮が付いた状態が残っていると、皮膚の再生が可能という事です。
傷が治るまでの過程その①出血凝固
皮膚と血管が破れることで血が出ます。体は血栓を作り、敗れた血管をふさぎます。血液や体液が乾燥し、かさぶたになり傷を塞ぎます。
傷が治るまでの過程その②炎症期
傷口に白血球が集まり、死んだ組織や細菌を除去します。深い傷は出血凝固の後に白くなっているのを見たことがある方も多いはず。それは白血球が傷を治すために働いているためなのです。傷が治るまでの過程その③増殖期
白血球の一部がコラーゲンなどを作り出します。そこに新しく毛細血管が出来、失われた皮膚を埋めます。血管やコラーゲンにより、肉芽組織が出来上がると、その上に表皮が再生されます。ここで重要なのは傷を埋めた肉芽組織は「瘢痕(はんこん)組織」に変わることです。
傷が治るまでの過程その④成熟期
表皮の下で皮膚の新陳代謝が進むことで、傷跡が見えなくなります。しかし、深い傷を負った際に出来た瘢痕は永久に残ります。
傷跡が残る理由まとめ
傷が治る過程を見てきました。傷跡が残っているという状態は、③の増殖期で出来る瘢痕組織が皮膚に変化せず、表皮から透けて見えている状態なのです。瘢痕は時間とともに色も薄くなって目立たなくなります。しかし、正常な皮膚ではないため、毛が生えることもなく、汗や皮脂の分泌もありません。
皮膚自体は治ったように見えるのですが、皮膚が元通りになる訳ではないのです。
年齢とともに傷の治りが遅くなる原因
年齢とともに、傷の治りが遅くなったと感じている方も多いのではないでしょうか。これは、老化現象が関係していたのです。
皮膚は表面から表皮、真皮、皮膚組織と3層になっているのです。
肌のターンオーバーは、健康な20~30代で約1か月。
1か月ごとに、表皮は新しいものになっているのです。しかし、ターンオーバーが乱れると表皮の生まれ変わりが上手く行かず、傷跡が残ります。
しかし、子供の時に出来た傷跡が残ってしまっているという方も多いはず。ターンオーバーも行われていたはずなのにと感じますよね。
子供の肌は大人よりも薄く柔らかいため、真皮に達する傷が多いのです。
真皮のターンオーバーが完了するのには平均して4年程が掛かります。
傷跡を消す方法はあるのか
顔や足など、目立つ場所の傷跡は消したいと思うもの。しかし、3層構造の一番下、皮下組織まで達した傷はターンオーバーで生まれ変わる皮ふではなく、別の肉組織で埋まる形となるため消すことは不可能です。
表皮や真皮までの傷であれば、早く治し傷跡も残りにくくすることが可能です。
まずは代謝を良くし、ターンオーバーを促したり正常な周期にすることで、傷跡は消えやすくなります。
これは肌のアンチエイジング効果でもあります。傷跡のマッサージや、血行を良くすることも効果が期待できます。
生活習慣の乱れと外部刺激に注意
不規則な生活をしていると、肌のターンオーバーが正常に行われなくなってしまいます。夜の10時から深夜2時までは睡眠を取るように心掛けましょう。
また、紫外線を浴びないように注意をしましょう。紫外線では皮膚にメラニンが作られるため、傷跡が濃くなる可能性があります。
レーザーで消すという選択肢
美容外科ではレーザーによる傷跡除去を受けることが出来ます。レーザー治療は数回に分けて行われることが一般的ですが、1回の治療自体は短いため精神的な負担にはならないでしょう。しかし、何度も通院することになり、レーザーでは消えない傷もあります。さらに、美容外科でのレーザー治療は自由診療となり治療費は実費です。そのため、数回に分けて行うレーザー治療は経済的な負担となる場合があります。
まとめ
傷跡を消す方法はあるものの、やはり完全に消すまでには時間もかかり、消えない可能性も高いもの。深い傷による傷跡でなければ、傷跡とは一見無関係である、生活習慣の見直しなどによって改善されます。
傷跡に直接アプローチをするのではなく、この様に体の中からケアをすることも大切なのです。